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2022/02/17 20:22

 川の流れから取り残されたような、まったりした水。

 英語ではstream poolと呼ぶそうです。
 水底が深く時が止まったように見えるその場所は、いわば高速道路のサービスエリア。日だまりでしばし休んだ水は再び下流へと急ぎます。

 こういう水をフィンランドの人々は一語で表現します。
 スヴァント(suvanto)。流れのゆるやかなところという意味です。

 転じて音楽では、アップテンポの楽曲の途中に展開するスローな部分。
 激動の歴史の中で穏やかだった一時代もスヴァントと呼ばれます。

 あなたの暮らしにスヴァントな時間帯はありますか?
 慌ただしい一日のどこかにスヴァントがあるとリフレッシュできますよね。


スヴァントにまつわる
3つの思い出

 フィンランドには人々の記憶に刻まれたスヴァントが3つあります。

 1つ目はヴィンテージ食器。

 1985年から1988年にかけてArabia社で作られたSuvantoシリーズです。チョコレートブラウンと淡い水色の帯。ハンドペイントによるかすれやにじみが1点1点異なり、ひっそりと静かなたたずまいは半世紀経った今も愛好家に人気です。

 2つ目はスヴァント村。

 フィンランド北部、ラップランド地方。キティネン川のほとりに赤や黄に塗られた木造のかわいい家々が並ぶ集落です。

 第二次世界大戦中、ラップランドはソヴィエト軍とドイツ軍の激戦の地でした。ほとんどの村が焼失した中、スヴァント村だけは奇跡的に無傷で残ったのです。往事のたたずまいを残した村は今では観光名所になっています。

 3つ目は現在ロシアのスホドリスコエ湖。
 フィンランド南東の国境を越えた向こう側にあり、かつてはスヴァント湖と呼ばれていました。

 Suvantoの一語にさまざまな思い出があり、人々の心は時を超えてゆきます。

 Suvantoシリーズの絵柄をデザインしたアラビア社のRaija Uosikkinen(ライヤ・ウオシッキネン)は、どのスヴァントを思い浮かべていたのでしょう。キティネン川のこんな写真をWikipediaで見つけました。彼女のデザインにどことなく似ている気もします。


時計の針をゆっくり回して

一杯のコーヒーと共に

スヴァントなひとときを

楽しんでみませんか?

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