2022/08/28 18:47
海外でこんなフレーズを耳にしたことはありませんか。
¡Ay, Caramba! (アイ・カランバ!)
カランバは驚いた時などに使われるスペイン語のフレーズ。
うわっ。おいおい。何これ。くそっ。あちゃー。
漫画 『タンタンの冒険』やアニメ『シンプソンズ』にもよく出てくるセリフなので、なじみのある人も多いかもしれません。
「うわっ」という名の
北欧アートガラス
陽気な響きのラテンの感嘆詞をそのままタイトルに冠したガラス作品が北欧にあります。
1987年に発表された《Caramba》シリーズ。
作者はUlrica Hydman-Vallien(ウルリカ・ヒードマン=ヴァリーン/1938-2018年)、スウェーデンを代表するガラスアーティストの一人です。
今回入荷したのはボウル。
大胆な筆さばきの太い黒線。
引っ掻いたような繊細な白線。
モノクロなのに極彩色のような華やかさを感じさせる作風です。
《カランバ》の絵柄は動物や花や人間。
こちらのボウルには美しい男女の横顔が描かれています。
一体この絵の何が 「カランバ(うわっ!)」 なのでしょう。
ボウルのこちら側は、長い髪をたなびかせた女性の横顔。
そして向こう側は……
男性と蛇。ということは……
楽園で起きた
あの大事件
ふたりはアダムとイブ!
エデンの園で大事件が起きたあの日、「カランバ!」と叫んだのは彼らだったのかもしれません。
イブ:
カランバ!(あらーっ)
知恵の実を食べたら
世界がまるで違って見えるわ!
アダム:
カランバ!(うわっ)
僕たち裸じゃないか。
葉っぱで隠さないと!
蛇:
カランバ!(おいおい)
お前さんたち、本当に
あの実を食っちまったのかい?
誰が口走ってもおかしくなさそうです。
そしてもう一人、ガラスには描かれていないこの方も。
神様:
カランバ!(あちゃー)
あの実を食べてはいかんと
言ったではないか。
楽園から出て行け〜っ!
《カランバ》シリーズの他の作品にはトカゲや鳥、魚なども描かれていて、どれもタッチが自由すぎてまるで怪獣のよう。《カランバ》は驚きに満ちた太古の楽園に思いを馳せて名づけられたのかもしれません。
ウルリカの絵に登場する生き物たちはどれも表情豊かで今にもしゃべり出しそうな顔をしています。かつてブリティッシュエアウェイズの尾翼やエリクソンの携帯電話のデザインも手がけた彼女の絵はポップでダイナミック。一目見たら忘れられません。
ボウルに描かれた「花とイブ」「蛇とアダム」は昔風に言うならレコードの両A面。その日の気分で置き方を変えても楽しそうですね。
もしかしたら
彼女の口グセ?
北欧の清潔なシンプルさと、ラテンの華やかさ。
ウルリカの作風のルーツは若き日にさかのぼります。
ストックホルムの学校で美術を専攻した彼女は、卒業後すぐには就職せず奨学金でアメリカへ。さらにその後メキシコ留学。太陽の国の街角でおそらく数えきれないほどの「カランバ!」を耳にし、また彼女自身も陽気に叫んでいたのかもしれません。
帰国後、ウルリカは1742年創業の老舗ガラスメーカーKosta Boda社に就職し、同社を牽引するデザイナーとして40年の長きにわたり創作を続けました。
こちらはもうひとつの人気シリーズ《カボカ》の花瓶。スレンダーな楕円形です。水を注ぎ、花を活ければ茎のまわりを4匹の魚たちがニコニコ泳いでいるように見えます。
* * * * *
暦の上ではもう秋ですが、まだまだ暑いですね。
ウルリカのアートなガラスでお部屋に涼を呼び込んで、一足早い季節の花を飾ってみませんか。