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2024/07/30 18:00


 エミリアの絵皿を眺めていたら、あることに気づきました。
 きょうはささやかな発見についてお話したいと思います。



 数ある北欧ヴィンテージ食器の中でも人気の高いコレクターズアイテム、エミリア(Emilia)。おしゃれな装いで穏やかなひとときを過ごす女性たちが描かれています。ライヤ・ウオシッキネン(Raija Uosikkinen/1923-2004)の代表作で、1957年から1966年まで生産されました。

 復刻版もあります。2023年にアラビア創立150年を記念してエミリアの復刻版がいくつか作られました。ただし、フォルムなどが当時と異なるためオリジナル版とは別物といった印象です。

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 さて、こちらは60年以上前に作られたオリジナル版のエミリア。木陰のハンモックで読書する女性の姿が幅310mmの角皿いっぱいに描かれています。



 花々に囲まれた庭。足元にじょうろ、手元のテーブルには紅茶のセット。帽子の飾りは小鳥たちのオブジェです。細部を眺めているだけで楽しい♪

 今度は一歩引いて、全体を眺めてみてください。
 何かが見えませんか。しだれる2本の木に囲まれた空間が、ほら……

 ハート型に見えますよね。

 これって偶然生まれた構図?
 他のエミリアも見てみましょう。

 たとえばこの135mm角皿。



 大きなハートのかたちが見えませんか。
 左側が少しはみ出した構図です。

 ハートの右半分にはベンチでくつろぐママと赤ちゃんが、左半分には乳母車と花、そして足元で歌う小鳥が描かれています。

 お次は深めの角皿。
 女性が膝に乗せたボウルをかき混ぜている絵です。



 やや左に傾いたハート型が見えますか。
 女性の背中から足先へのカーブがハートの右半分に重なります。

 もしかしてライヤ・ウオシッキネンは、ハート型の構図を意図的に取り入れたのでしょうか。

 角皿以外にも、円筒形のボウルの蓋や……



 カップや……



 バターケースに……



 草花や小物に囲まれたハート型の空間が見え隠れしています。

 無意識でこういう構図になったの?
 それともライヤさんの遊び心?
 彼女が生きていたら聞いてみたかったです。

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 ハート型と人類のかかわりは長く、その起源は植物だったと言われています。約2000年前に絶滅した花シルフィウム(Silphium)の種子のかたちがハート型でした。古代ギリシャ時代にはコインに刻まれ、古代ローマでは香辛料として人々に愛され、とくに女性の薬として珍重されていたようです。あまりの人気に乱獲され、プリニウスが『博物誌』を書いた頃にはほぼ絶滅していたとも。

 歴史に思いを馳せながら改めてエミリアを見ると、植物たちが取り囲むようにハートのかたちを作っているのが、何だかとても自然なように見えるのです。



 ハート型はまた、ふたりの人物が向き合ってすわる姿にも見えますよね。

 エミリアシリーズに登場するおしゃれな女性のモデルは、ライヤ・ウオシッキネンの叔母のセルマといわれています。アメリカ暮らしのおしゃれな叔母さんに憧れた少女ライヤの思いが、そのままハートのかたちに現れたのかもしれません。




 エミリアの食器をお持ちの皆さん、お手元のデザインを確かめてみてください。優しいハートの小宇宙が見えてきませんか?








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