2025/04/14 17:58
世界の果て(Ultima Thule)という名の美術展に行ってきました。
フィンランドを代表するデザイナー、タピオ・ヴィルカラ(Tapio Wirkkala/1915年〜1985年)日本初の回顧展。タイトルには2つの意味が込められています。1つは土地、1つは作品。

Ultima Thuleはラテン語で世界の果て、または最北端。
タピオが1960年代にイッタラで制作した作品シリーズの名前でもあります。
ウルティマツーレのグラスや皿や花瓶は展示会場の一番奥に飾られていて、まるで氷の国の円卓のよう。(このエリアのみ写真撮影OKです)

裏返したグラスの底は無数の滴を模したフォルム。ラップランドの融けかかった氷をイメージしたデザインです。
フィンランド最南端の港町で生まれたタピオ・ヴィルカラは、穏やかな故郷とは対照的な北の大地ラップランドの大自然を愛しました。1960年代に自らの手で小屋を建て、夏になると妻の陶芸家ルート・ブリュックと子供たちを連れてラップランドへ。電気もない小屋で、太陽の沈まぬ白夜の明かりをたよりに創作に勤しんだといいます。
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『世界の果て』展にはタピオの初期の代表作、Kantarelliも展示されています。
カンタレリは針葉樹の森に自生するアンズタケ。貴重な栄養源として北欧の人々に愛されてきたキノコが、息を飲むような美しいガラス作品に生まれ変わったのは1946年でした。イッタラ主催のデザインコンペで優勝し、1951年にはミラノトリエンナーレで金賞に輝いています。手吹きのガラスに職人が繊細な線を手彫りで仕上げた、時を超えた名品です。
フィンランドの森で見かけるアンズタケは、北のラップランドでも短い夏を惜しむようにわずかに自生しているそうです。カンタレリで名声を手にしたタピオも、創作の合間に野山でアンズタケに再会し、若き日を懐かしんだかもしれません。
たなびくように広がる笠。
繊細なひだのライン。
すっくと伸びた柄(え)。
大小さまざまなガラスのカンタレリは今や稀少なヴィンテージ品。 (コグマスでも取り扱っています/写真)。
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タピオ・ヴィルカラの妻ルート・ブリュックもまたラップランドを愛したアーティストでした。彼女の展示会『蝶の軌跡』も2019年に日本各地で開催されています。

タピオがデザインしたフォルムに彼女がデコレートした作品は日本でも人気。 たとえばWinter Journey(冬の旅)シリーズは、木立と家の連なる丘の情景が北国への旅情を誘います。
こちらは積雲を意味するCumulus(キューミュラス)シリーズ。絵本から抜け出したような雲の群れが北の空を流れてゆきます。
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パイプをくゆらす熊のような風貌と大胆な作風。当時の欧州メディアからは《北欧の野生児》と呼ばれ、「熊とすもうをとり、朝から花を食す男」と誇張まじりに賞賛されていたタピオ・ヴィルカラ。

実際の彼はアウトドアを静かに愛する森の職人でした。人前に出るのを好まず、取材にも多くを語らず。『世界の果て』展の会場では、そんな彼の作品群から聞こえてくるささやきに耳をすませてみてください。
フィンランドを代表するデザイナー、タピオ・ヴィルカラ(Tapio Wirkkala/1915年〜1985年)日本初の回顧展。タイトルには2つの意味が込められています。1つは土地、1つは作品。

タピオが1960年代にイッタラで制作した作品シリーズの名前でもあります。
ウルティマツーレのグラスや皿や花瓶は展示会場の一番奥に飾られていて、まるで氷の国の円卓のよう。(このエリアのみ写真撮影OKです)

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『世界の果て』展にはタピオの初期の代表作、Kantarelliも展示されています。
カンタレリは針葉樹の森に自生するアンズタケ。貴重な栄養源として北欧の人々に愛されてきたキノコが、息を飲むような美しいガラス作品に生まれ変わったのは1946年でした。イッタラ主催のデザインコンペで優勝し、1951年にはミラノトリエンナーレで金賞に輝いています。手吹きのガラスに職人が繊細な線を手彫りで仕上げた、時を超えた名品です。
たなびくように広がる笠。
繊細なひだのライン。
すっくと伸びた柄(え)。
大小さまざまなガラスのカンタレリは今や稀少なヴィンテージ品。
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タピオ・ヴィルカラの妻ルート・ブリュックもまたラップランドを愛したアーティストでした。彼女の展示会『蝶の軌跡』も2019年に日本各地で開催されています。


寡黙な夫に寄り添いつづけた妻ルート・ブリュックの作品も少しですが展示されています。東京ステーションギャラリーで6月15日まで。詳しくはこちらに。

