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2022/05/09 15:55

 水色と青の対比が美しいスウェーデンの絵皿。


 作られたのは1923年。

 釉薬を塗った表面を引っ掻くズグラッフィート技法(Sgraffito)で描かれた、99年前の作品です。


 何の建物か分かりますか?

 スウェーデン第2の都市ヨーテボリ(Göteborg/イェーテボリとも)を訪ねたことのある人は見覚えがあるかもしれません。


 スカンセン・クローナン(Skansen Kuronan/王冠の意味)。

 街の丘に立つ六角形の建造物で、屋根に王冠のかたちを戴いています。


 絵皿(または写真)の右端にご注目。

 大砲です。


 スカンセン・クローナンは17世紀、ヨーテボリの街誕生と共に建てられた要塞。その来歴を調べるうち、青い絵皿が歴史的にも意義深い品であることが判ってきました。


  ♪ここからは『なんでも鑑定団』の鑑定中BGMを脳内再生しながらお楽しみください♪


 99年前に絵皿を作ったのはこの人。

 ジョセフ・エクベル(Josef Ekberg/写真左)。


 12歳からグスタフスベリで働きはじめたエクベルは、師匠のグンナル・ヴェンネルベリ(写真右)に才能を見出され、新しい技法で北欧陶器の発展に貢献しました。写真は彼らの作品がパリ万博で高い評価を受けた1900年頃。


 エクベルの作風は19世紀末からヨーロッパで流行したアールヌーボー様式で、草花などの曲線的な美しさを取り入れた作品を多く残しています。たとえば直径10cmの小さな作品にもぷっくりと丸味を帯びた花柄をあしらいました。優雅さと素朴さが入り交じった北欧風アールヌーボーといった感じ。


 1917年に芸術監督から退いた後もジョセフ・エクベルはグスタフスベリにとどまり、制作を続けます。1923年の青い絵皿もそのひとつ。


 夏空を思わせるダイナミックな雲。

 影絵のような建物。

 門へ至る坂道は木版画のような素朴な味わいがあります。


 皿の裏側にこんな表記がありました。


 Göteborgsutställningen。

 直訳するとヨーテボリ博覧会。

 1923年はヨーテボリ建都300年を祝う万国博覧会が開催された年だったのです。

街の平和を

見守ってきた丘



 17世紀、スウェーデン西部のイェーテ川河口にヨーテボリの街は建設されました。当時の木版画を見ると様子が分かります。左奥の丘にぽつんと立っているのが要塞スカンセン・クローナン。


 西から攻めてくる敵国の船に備え、河口を見おろす丘に砲台が置かれましたが、大砲が火を噴くことは結局一度もなかったそうです。


 お次の写真は19世紀末。

 のどかですね。


 反対側は商店街でした。


 そして1923年。

 記念すべき建都300年を迎えたヨーテボリの街並みがこちら。


 300年記念博は1923年5月8日から9月30日まで開催され、街のあちこちにパビリオンやメリーゴーラウンドが建てられました。当時作られた遊園地は今も多くの人が訪れる観光スポットになっています。


 エクベルの青い絵皿は平和の祝賀品だったのです。記念に販売されたのかもしれません。


 下の写真は1977年頃。

 造船で栄えた街が丘の上から見渡せます。


 スウェーデンを旅する機会があったら、ヨーテボリの小さな丘にのぼってみてください。

100年の平穏

400年の平和

 

 きたる2023年、ヨーテボリは建都400年を迎えます。

 現地では早くも資料展示などが始まっているようです。

 ヴィンテージ品の年数は、持ち主がその歳月を共に生きてきた証でもあります。


 戦争で家が焼失しなかった。

 地震で食器棚が倒壊しなかった。

 夫婦げんかで皿が飛び交わなかった。


 平和とは穏やかな一日一日の積み重ねなのかもしれません。


 青い絵皿も来年100歳。

 100年を境にヴィンテージ品はアンティークへと呼称が変わります。


 北欧アンティークの絵皿が新しい持ち主に愛され、これからも穏やかな旅を続けていけますように。




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