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ニルスと一緒にスウェーデンを旅する絵皿
2023/11/11 11:15
ご存じですか。『ニルスのふしぎな旅』。
妖精の魔法で小人に変えられた少年が、鳥の背に乗ってスウェーデン中を旅するお話。
アニメで観た人も多いかもしれません。
動物をいじめていたわがままな農場の少年ニルスが旅先で多くを学び、心優しい人間へと成長していきます。最終章の嬉しい再会と悲しい別れは感動的でした。
女性初のノーベル文学賞作家Selma Lagerlöf(セルマ・ラーゲルレーヴ)が120年前に書いた『ニルスのふしぎな旅』は、スウェーデン人にとって国民的な児童文学。20クローナ紙幣や切手の図案にもなりました。登場する動物たちの言葉はおとなの胸にも深く刺さります。
その名場面を描いた青い絵皿のシリーズが、1970年から1999年にかけて毎年1枚ずつ発売されていたんです。
・ ・ ・ ・ ・
何枚かご紹介しましょう。
まずはこちら。1973年に発売された絵皿です。
暖かそうな部屋のようすが縦横約20cmの皿いっぱいに描かれています。
柱時計、布張りのロッキングチェア、家族の写真。
背を向けてすわっているのが小人のニルスです。
ドアの外から覗きこんでいるのは一羽のガチョウ。ガチョウなのに空を飛べるモルテンは、旅を通じてニルスの大切な友だちになります。
左の窓の外にご注目。
大きな星がひとつ見えますか。
これはキリスト生誕を告げる「ベツレヘムの星」。
クリスマスシリーズの絵皿には毎年この星がどこかに描かれています。
1974年の絵皿は、森の端に立つヘラジカと犬。
低い石垣の向こうに広がる畑と町。ニルスの物語には人間たちと暮らす幼いヘラジカが登場します。絵皿に描かれているのはそのお母さんのようです。
大きな星に照らされて、夜空のかなたへ飛んで行く鳥たち。その背中に小さなニルスが乗っています。
1975年の絵皿は、大きな熊と小さなニルス。
橋の向こうに製鉄所が立ち、煙突からは火煙がたちのぼっています。
120年前に書かれたニルスの物語には自然と人間の共生について考えさせられる場面がいくつもあります。ニルスに助けられた熊は森へ無事逃げ帰り、少年に礼を言います。そんなふたりをベツレヘムの星が優しく見下ろしています。
1976年の絵皿は、大学生の部屋の窓辺に腰かけるニルス。
卒論のページがばらばらになって悲しむ学生のために、ニルスはカラスのバタキと共にページを拾い集め、束ね直してあげています。
1977年の絵皿は、スウェーデン西部ヴェルムランド州の美しい田園風景。
ゆるやかなクラール川を進むのは丸太を運ぶ船頭さん。左に見える大きな家は『ニルスのふしぎな旅』の作者セルマ・ラーゲルレーヴの生家です。父親の死後、家は人手に渡りましたが、彼女はのちにノーベル賞の賞金で買い戻しています。現在は記念館になっているそうです。
岸辺にニルスがいますね。
水を汲んでいるのかな。
・ ・ ・ ・ ・
ニルスの絵皿シリーズは1970年に始まりましたが、クリスマス絵皿はその2年前から始まっていました。1968年と1969年の絵皿にニルスは登場しません。そのかわり、季節感あふれる静かな情景が描かれています。
1968年の絵皿は、森の雪道を進む馬ぞり。
クリスマス用の若木をそりに乗せ、歩いて家路を急ぎます。暖かい家で待つ家族の笑顔が目に浮かぶようです。
1969年の絵皿は、陸地をめざす漁船。
防寒具に身を包んだ漁師が網を引き上げ、帰り支度をしているところでしょうか。大きく輝く星に照らされながら、船は進みます。
冬の海なのに、なぜか温かさや希望を感じさせてくれる作品です。
・ ・ ・ ・ ・
クリスマス絵皿を毎年製作したのは、以前
ブログ
でもご紹介したスウェーデンの陶磁器メーカーRorstrand(ロールストランド社)。同社の黄金期を支えたデザイナー、Gunnar Nylund(グンナー・ニールンド)が作画を担当しました。
絵皿の裏には彼のイニシャルG・Nと共に「限定生産/コレクターズアイテム」の一文が添えられています。
(上の写真をクリックするとクリスマス絵皿の一覧ページへ飛べます)
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